生成AIで情報収集「完結」75%の衝撃――4人に1人がサイトを訪れないゼロクリック時代の到来

生成AIだけで情報収集が完結すると回答したビジネスパーソン75.2%、検索エンジンを訪れないゼロクリックが4人に1人という統計を示す図解 時事ニュース
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「調べ物はもう、検索エンジンではなくAIに聞く」——そんな行動変化が、数字として裏付けられ始めています。2026年に入り、日経BPコンサルティングや博報堂DYグループの調査機関が相次いで発表したデータは、生成AIが単なる「便利な補助ツール」から、情報収集そのものを完結させる主役へと役割を変えつつある実態を浮き彫りにしました。

本記事では、直近に公表された二つの調査結果を手がかりに、ビジネスパーソンの情報収集行動がどのように変わっているのか、そしてその変化が企業のマーケティングやサイト運営にどのような影響を及ぼすのかを、データに基づいて整理します。

ビジネスパーソンの75%が「生成AIだけで情報収集が完結する」と回答

日経BPコンサルティングが2025年11月14日から19日にかけて実施した調査(20代から60代の国内企業勤務者1,000人を対象)によると、仕事で生成AIを活用していると回答した層は47.1%にのぼりました。さらに注目すべきは、その生成AI利用者のうち75.2%が「生成AIの回答だけで情報収集を完結できる」と回答した点です。従来であれば検索エンジンで複数のサイトを比較検討していた場面が、AIとの対話一つで完結してしまう時代が到来しつつあることを示すデータといえます。

世代別に見ると、20代では利用率が50%以上に達している人が19.5%、30代が16.0%、40代が12.5%と、若い世代ほど生成AIへの依存度が高い傾向も明らかになりました。一方で20代の22.0%は生成AIを業務でまったく利用していないと回答しており、世代内でも活用度合いの二極化が進んでいる点は見逃せません。

また、場面別に見た「検索エンジンを除く」情報源の一位は、業務課題の解決では新聞・専門誌(17.9%)、新しい言葉や事柄の把握では生成AI関連サービス(20.1%)、製品機能の把握では企業サイト(21.3%)、評価の確認では製品比較サイト(19.4%)という結果でした。興味深いのは、情報の裏付けを取る際に「公式サイトを再検索する」と答えた人が32.1%にのぼった点です。生成AIの回答を鵜呑みにせず、最終確認は企業の公式情報に頼るという行動パターンも同時に存在していることがわかります。

AI検索利用は8か月で約3倍、4人に1人が「ゼロクリック」に

博報堂DYグループの次世代検索研究所が2025年11月に実施した調査でも、同様の傾向が裏付けられています。2025年3月時点との比較で、AI検索サービスの利用率はプライベートシーンで8.4%から27.6%へ、ビジネスシーンで9.4%から29.9%へと、いずれもおよそ3倍に急増していることが明らかになりました。

特に注目すべきは「ゼロクリック」の実態です。検索行動において、生成AIの回答のみで疑問を解決し、従来型の検索結果ページに一切アクセスしなかった人の割合は13.7%、その後さらに検索AIサービスに追加で質問した人を含めると23.9%、つまり約4人に1人が企業サイトへ一度もたどり着かないまま情報収集を終えていることになります。一方で、生成AIの回答だけでは不十分だと感じ、従来型の検索に戻った人も32.8%存在しており、AIと検索エンジンの併用も依然として根強いことがうかがえます。

検索AIサービスの利用目的としては「情報収集」が71.1%と圧倒的多数を占める一方、生成AIの回答について「信頼できる」と回答した人はどの世代でもおおむね50%前後にとどまりました。さらに、生成AIの回答をもとに実際の購買や来店につながったと回答した人は7.4%にとどまり、情報収集の主役がAIに移る一方で、購買の意思決定にはまだ距離があることも読み取れます。加えて、検索連動型広告について「意図的にクリックを避けている」と回答した人は約6割にのぼり、広告の効果自体にも変化の兆しが見られます。

独自考察――検索から「引用」へ、企業マーケティングの生存戦略

SEOからGEO(生成エンジン最適化)への主戦場の移動

これまで多くの企業が注力してきたSEO(検索エンジン最適化)は、Googleなどの検索結果で上位に表示されることを目的としてきました。しかし、ユーザーの4人に1人が検索結果ページそのものを訪れなくなっているという現実は、「上位表示されても見られない」という新しい壁が生まれつつあることを意味します。今後は、生成AIの回答内で自社の情報が引用され、参照元として名前が挙がるかどうかを最適化する、いわゆるGEO(Generative Engine Optimization)やAEO(Answer Engine Optimization)と呼ばれる領域への投資配分が、企業のマーケティング戦略における優先課題として急浮上してくると考えられます。

「信頼度50%」が示す、AIに任せきりにできない領域の存在

生成AIの回答を「信頼できる」と答えた人がどの世代でもおよそ半数にとどまっている点は、企業にとって重要な示唆を含んでいます。ユーザーは生成AIの回答を「たたき台」として受け止めつつも、最終的な判断や裏付けの確認は依然として一次情報、つまり企業の公式サイトや専門メディアに求めている可能性が高いということです。前述の調査で「公式サイトを再検索する」人が3割超存在した事実も、この見立てを裏付けています。企業サイトの役割は「集客の入口」から「AIの回答を裏付ける最終確認の場」へと、少しずつ性格を変えていくのではないでしょうか。

20代の行動様式は「いずれ全世代に広がる標準」と捉えるべきか

20代の約2割が利用率50%以上という高い水準にある一方、同じ20代の2割超がほぼ生成AIを使っていないという二極化構造も見逃せないポイントです。この二極化は、生成AI活用が単なる「年齢」の問題ではなく、業務内容やリテラシー、企業のITガバナンス方針によって左右されていることを示唆しています。とはいえ、過去のスマートフォンやSNSの普及過程を振り返ると、若年層で先行した行動様式が数年単位で他の世代にも広がっていく傾向は繰り返し観測されてきました。生成AIによる情報収集の「完結」も、現時点では一部の先進的な利用者に偏った現象に見えても、中期的には企業のマーケティング担当者が前提とすべき「標準的な顧客接点」になっていく可能性は十分にあると考えられます。

検索連動型広告の曲がり角と、広告予算配分の再設計

検索連動型広告を意図的に避ける人が約6割にのぼるというデータは、長年デジタル広告の中核を担ってきたリスティング広告のビジネスモデルに一石を投じるものです。ゼロクリックによってそもそも広告枠が表示される検索結果ページ自体を訪れないユーザーが増えれば、広告のインプレッション機会そのものが目減りしていくことになります。企業のマーケティング担当者は、検索連動型広告への依存度を見直しつつ、生成AIの回答内で自社が言及される「非広告的な露出」をどう設計するか、という新しい課題に向き合う必要が出てきそうです。

中小企業やオウンドメディア運営者にとっての機会とリスク

大企業に比べて広告予算が限られる中小企業やオウンドメディア運営者にとって、生成AIによる情報収集の主流化は必ずしも逆風だけではありません。生成AIは検索順位という「広告費や被リンク数がものを言う土俵」とは異なる基準で情報源を評価している可能性があり、専門性の高い一次情報や独自データを継続的に発信しているサイトほど、AIの回答内で引用されやすくなるとの見方もあります。一方で、生成AIの学習・参照データに自社サイトが含まれるかどうかを能動的にコントロールする手段は現時点で限られており、「気づいたら参照されなくなっていた」というリスクとも常に隣り合わせである点には注意が必要です。

企業が今すぐ着手すべき現実的な対応

以上を踏まえると、企業がまず着手すべき対応としては、自社の製品やサービスに関する情報を構造化データやFAQ形式で明確に整理し直すこと、専門家の見解や一次データを盛り込んだコンテンツを強化すること、そして主要な生成AIサービスに自社名や商品名を実際に問い合わせてみて、どのように紹介されているかを定期的に確認することが挙げられます。SEOの知見をゼロから捨てる必要はありませんが、「検索順位」だけでなく「AIにどう引用されているか」を継続的にモニタリングする体制づくりが、これからのマーケティング担当者にとって欠かせない業務になっていくと考えられます。

まとめ

日経BPコンサルティングの調査ではビジネスパーソンの75.2%が生成AIだけで情報収集を完結できると回答し、博報堂DYグループの調査ではAI検索の利用率が8か月で約3倍に急増、約4人に1人がゼロクリックの状態にあることが明らかになりました。これらのデータは、検索エンジンを起点としたこれまでのマーケティングの前提が、静かに、しかし着実に変化しつつあることを示しています。生成AIの回答への信頼度がまだ5割前後にとどまっている今だからこそ、企業には「AIにどう引用されるか」という新しい視点を取り入れ、情報発信のあり方を見直す猶予が残されているといえるでしょう。

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