生成AIの信頼度33.4%がSNSの19.1%を逆転も、AI広告は4割が「信頼しにくい」――消費者の”AI二重基準”の正体

生成AIの信頼度33.4%がSNSの19.1%を逆転、AI広告は4割が信頼しにくいと回答する調査データを示す図解 時事ニュース
スポンサーリンク

生成AIの普及が進む中、消費者と企業の間に奇妙な”ねじれ”が生まれつつあります。日本ダイレクトマーケティング学会が2026年7月に実施した調査では、購買行動において生成AIを「信頼できる」と答えた人が33.4%に達し、SNSの19.1%を初めて上回りました。生成AIが提示する情報は、もはやSNSの口コミよりも頼れる存在になっているのです。

しかし、その一方で別の調査では、「AIが作った広告は信頼しにくい」と答えた消費者が約4割にのぼることも明らかになっています。同じ生成AIという技術でありながら、消費者の受け取り方はなぜこれほど分かれるのでしょうか。本記事では、2つの最新調査データを手がかりに、この”AI二重基準”の正体と、マーケティング現場が取るべき対応策を考察します。

生成AIの「購買アドバイス」はSNSより信頼される時代に

日本ダイレクトマーケティング学会が2026年7月15日から16日にかけて、生成AIの利用経験がある20代から60代の男女1,009人を対象に実施した調査によりますと、生成AIを「信頼できる」と回答した人は33.4%、「信頼できない」と回答した人はわずか13.2%にとどまりました。一方のSNSは「信頼できる」が19.1%、「信頼できない」が31.5%と、評価が真逆の結果になっています。

年代別に見ると、購買時に生成AIを活用している割合は20代で約70%に達する一方、50代から60代では約40%にとどまっており、世代による活用度の差も浮き彫りになりました。利用している生成AIツールはChatGPTが68.9%で最多、Geminiが52.3%、Copilotが24.7%と続きます。特にGeminiは60代の利用率が66.0%と20代の44.4%を上回っており、年代ごとにツールの好みが異なる点も注目されます。

生成AIを使うメリットとしては「時間短縮」が59.1%で最も多く、「商品選択の支援」が34.7%、「情報整理」が31.5%と続きました。実際、生成AIの活用によって検索回数が減ったと答えた人は34.2%、サイトの回遊や閲覧時間が減ったと答えた人は28.6%、意思決定にかかる時間が短縮したと答えた人は27.0%にのぼります。生成AIが従来の「検索して複数サイトを比較する」という購買行動そのものを置き換えつつあることがうかがえます。

一方で「AIが作った広告」は4割が「信頼しにくい」と回答

生成AIという技術そのものへの信頼が高まっているにもかかわらず、企業が生成AIを使って作成した広告に対しては、消費者は厳しい視線を向けています。システムリサーチが全国の20代から50代の男女250名を対象に実施した調査では、「AIが作った広告は信頼しにくい」と回答した人が最多の約4割を占めました。

さらに、不自然または作られた感じのある広告を見たことがあると答えた人は約5割にのぼり、そのうち「AIが作っていそう」「文章や表現が不自然」と感じた人は約6割にのぼります。信頼できない理由としては「情報の真偽が判断しにくい」という回答が圧倒的多数を占めました。逆に信頼できると感じる条件としては、「人がチェック・監修していると分かる」「内容が具体的で分かりやすい」「実際に使った人の体験や口コミがある」という3点が挙げられています。

独自考察――消費者に根付く”AI二重基準”の正体

「情報源としてのAI」と「発信者としてのAI」は別物として受け止められている

2つの調査結果を見比べると、消費者は生成AIを嫌っているわけではないことが分かります。むしろ、購買のアドバイザーとしての生成AIは高く評価されています。問題は、生成AIが「中立な情報源」として振る舞う場合と、「企業の広告を代弁する発信者」として振る舞う場合とで、消費者の警戒レベルが大きく変わる点にあります。ChatGPTやGeminiに自分で質問して得た回答は、自分の意思で取得した一次情報として受け止められやすい一方、企業が発信するAI生成広告は、最初から誰かの意図が混ざった二次情報として警戒されやすいのです。この非対称性を理解しないまま「AIを使えば効率化できる」という発想だけで広告制作にAIを導入すると、信頼のギャップに足元をすくわれるリスクがあります。

「人の監修」が信頼回復の鍵――AI生成コンテンツの運用体制を問い直す

システムリサーチの調査で、信頼できると感じる条件の1位に挙がったのが「人がチェック・監修していると分かる」という点でした。これは、AIが広告文を生成する工程そのものを否定しているわけではなく、「最終的な責任を人間が負っている」という手触りが消費者の安心材料になっていることを示しています。マーケティング現場では、AI生成コンテンツに「監修者のコメント」や「編集部チェック済み」といった表示を添えるだけで、信頼度の受け取り方が変わる可能性があります。コストをかけずにできる改善策として、まず着手すべき施策と言えるでしょう。

検索からAIへ――SEOからAIO・GEOへの移行で問われる”信頼設計”

検索回数が34.2%減少しているという事実は、従来のSEO(検索エンジン最適化)だけに依存したマーケティング戦略の限界を示しています。消費者が生成AIに直接尋ねて答えを得るようになった今、企業に求められるのは、生成AIに正確かつ信頼できる情報源として引用されるための「AIO(AI最適化)」「GEO(生成エンジン最適化)」の視点です。価格情報の誤りへの不満が24.5%、仕様・機能情報の誤りへの不満が20.5%にのぼっていることからも、生成AIが参照する情報の正確性と更新頻度を企業側が管理する重要性が増しています。

世代間ギャップをどう捉えるか――20代と50~60代で分かれる”AIリテラシー”

購買時の生成AI活用率が20代で約70%、50~60代で約40%という結果は、マーケティング施策を年代別に分ける必要性を示唆しています。若年層向けには生成AIでの検索・比較を前提としたコンテンツ設計が有効ですが、50代以上の層に対しては、従来型の検索結果ページや口コミサイトでの情報発信も依然として重要です。すべての世代に同じAI対応を当てはめるのではなく、年代ごとの情報収集行動に応じた複線的な戦略が求められます。

“AIっぽさ”を消すのではなく、”人の手触り”を可視化する発想へ

広告への不信感の多くは「AIっぽさ」、つまり文章や表現の不自然さに起因しています。しかし、この課題への対応は、AIが書いたことを隠すことではありません。むしろ、実際に使った人の体験談や口コミを広告内に積極的に組み込み、AIが生成した部分と人間の実体験が語る部分を組み合わせることで、信頼できる条件として挙げられた「体験や口コミがある」というニーズに応えることができます。AIによる効率化と、人間による信頼性の担保を両立させる設計が、今後のクリエイティブ制作の標準になっていくと考えられます。

日本企業が今すぐ着手できる3つの対応策

以上を踏まえると、日本企業のマーケティング現場が優先的に取り組むべき対応策は大きく3つに整理できます。第一に、AI生成広告には監修プロセスを明記し、人の目が介在していることを示すこと。第二に、生成AIに引用される前提で、自社サイトの価格・仕様情報を定期的に更新し、正確性を保つこと。第三に、広告のクリエイティブにおいては、AIによる文章生成と、実際の利用者の声を組み合わせたハイブリッドな構成を検討することです。いずれも大きな投資を必要とせず、既存の体制の中で段階的に始められる取り組みと言えるでしょう。

まとめ

生成AIは、購買アドバイザーとしては既にSNSを上回る信頼を獲得している一方で、企業の広告制作にそのまま用いると、消費者の約4割から「信頼しにくい」という評価を受けてしまう――この”AI二重基準”は、今後のマーケティング戦略を考える上で避けて通れない論点です。重要なのは、AIを使うこと自体ではなく、どのように人の関与を可視化し、情報の正確性を担保しながらAIを活用するかという点にあります。生成AIの信頼性を高める工夫を重ねている企業ほど、今後の消費者との関係構築において優位に立てるのではないでしょうか。

コメント