CMO308人調査で判明、予算成長率1.7%の衝撃――「人材かAIか」論争と悲観50%超え

CMO調査2026、マーケティング予算の伸び率1.7%を示すグラフ 時事ニュース
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2026年に入り、企業のマーケティング部門を取り巻く環境は急速に厳しさを増しています。デューク大学フュークア経営大学院とデロイト、米国マーケティング協会(AMA)が共同で実施する「CMO調査(The CMO Survey)」の最新版(2026年1月7日~29日実施、第35回、回答者308人・97%がVP以上の幹部)では、マーケティング責任者たちが直面するリアルな数字が次々と明らかになりました。予算成長率はここ数年で最も弱い水準まで落ち込み、人員増加率は前年から半減。さらに回答者の半数以上が「2020年半ば以来もっとも悲観的」と答えるなど、AIの普及が進む一方で組織的な危機感が急速に強まっている実態が浮かび上がっています。本記事では、この最新調査のデータをもとに、いま企業が向き合うべき課題を掘り下げます。

マーケティング予算の伸びはわずか1.7%――ここ数年で最も弱い成長率

今回の調査によると、マーケティング予算は企業全体の売上高の9.0%、全社予算の9.6%を占めており、いずれも過去の水準と比べて大きな変化はありません。しかし注目すべきは伸び率です。過去12カ月間のマーケティング予算成長率はわずか1.7%にとどまり、これは調査史上でも「ここ数年で最も弱い伸び」だと報告されています。

内訳を見ると、新規顧客の獲得に振り向けられる予算は既存顧客の維持・ロイヤルティ施策向け予算を上回る配分となっている一方、人材育成に充てられる予算は全体のわずか3.8%にとどまっています。景気の先行き不透明感が強まるなかで、企業が「攻め」と「守り」のどちらに軸足を置くべきか判断しかねている様子がうかがえます。予算そのものは維持されていても、伸びが鈍化しているという事実は、マーケティング部門が新たな挑戦よりも既存施策の維持を優先せざるを得ない状況に置かれていることを示していると言えるでしょう。

人員増加率は前年から半減、「AIより人材」論争と能力スコア5点の壁

人材面でも厳しい数字が並びます。調査ではマーケティング部門の人員増加率が前年から50%減少したと報告されており、AIツールの導入が進む一方で、実際の採用は大きく抑制されていることがわかります。

一方で、生成AIを活用した検索最適化であるGEO(Generative Engine Optimization、生成AIエンジン最適化)については、すでに調査対象企業の40%が導入していると回答しており、AIを活用した情報発信の手法は着実に浸透しています。ただし興味深いのは、AIをはじめとするマーケティングテクノロジー活用の「能力スコア」が、7点満点中いずれの項目においても5点を超えたことが過去2年間一度もないという結果です。ツールの導入率が上がっているにもかかわらず、実際にそれを使いこなせているという自己評価は伸び悩んでいるのです。

さらに、デロイトが公表した同調査の別集計では、「売上成長にもっとも重要な要因」として、CMOたちが「優れた人材を確保すること」と「優れた技術を導入すること」を同じ割合で挙げたことも明らかになっています。AIツールがどれだけ普及しても、それを使いこなす人材がいなければ成果にはつながらない――という現場の実感が数字に表れた形です。

独自考察――CMO調査から読み解く、日本企業が備えるべき5つの視点

ここからは、今回のCMO調査の結果を踏まえ、日本のビジネスパーソンやマーケティング担当者が今後どのように向き合うべきかについて、独自の視点から考察していきます。

なぜ「人材か技術か」という問いの立て方自体が古いのか

今回の調査で「人材」と「技術」が同率で挙げられたという結果は、一見するとどちらを優先すべきかの決着がつかなかったようにも読めます。しかし筆者は、この結果こそが「人材か技術か」という二者択一の発想そのものが、すでに実態に合わなくなっていることを示していると考えます。AIツールは人材の代替ではなく、人材の能力を引き出すための土台にすぎません。能力スコアが7点満点中5点を超えられずにいるという事実は、ツール導入だけでは成果が頭打ちになり、それを使いこなす組織文化やスキルの育成が伴って初めて数字が伸びていくことを物語っています。二者択一ではなく「人材育成とAI投資を同時並行で進められるかどうか」が、今後の分水嶺になっていくと見るべきでしょう。

人員増加率の半減は「AIによる代替」ではなく「採用の慎重化」と読むべき理由

人員増加率が前年から半減したというニュースは、AIが人間の仕事を奪っているという文脈で語られがちです。しかし今回の調査結果を丁寧に読み解くと、その解釈はやや性急だと言えます。経済の先行きに対する悲観が2020年半ば以来もっとも強まっているというデータと合わせて見ると、人員増加の鈍化は「AIに置き換えられたから」というよりも、「不透明な景気見通しのなかで、企業が採用そのものに慎重になっている」結果である可能性が高いと考えられます。AIの活用と人員抑制が同時期に進行しているからといって、両者を単純な因果関係で結びつけるのは早計であり、むしろ景気循環的な要因を切り分けて捉える視点が必要です。

投資削減が増加の4倍という数字が意味する「守りのマーケティング」への転換

調査では、マーケティング投資について「削減する」と答えた企業数が「増やす」と答えた企業数の4倍にのぼったことも報告されています。これは単なる予算の帳尻合わせではなく、マーケティング部門そのものの役割が変質しつつあることを示唆しています。短期的な成果を証明しやすい既存顧客の維持・囲い込み施策に予算が集中し、中長期的なブランド構築や新規開拓への投資が後回しにされる傾向は、一時的には財務指標を守ることができても、数年後に成長の種を枯らしてしまうリスクをはらんでいます。実際に海外の分析でも「パイプライン指標でしか価値を証明できないマーケティング部門は、やがてその範囲でしか評価されなくなる」という指摘がなされており、短期防衛と中長期投資のバランスをどう設計するかが、今後のCMOに問われる最大の経営課題になると考えられます。

GEO導入率40%という数字は、日本企業にとって「対岸の火事」ではない

生成AIエンジン最適化(GEO)がすでに調査対象企業の4割で導入されているという事実は、日本企業にとっても看過できない数字です。従来のSEO対策だけでなく、AI検索エンジンやチャット型AIの回答内に自社の情報がどう扱われるかという新しい情報設計の巧拙が、今後の集客力を左右する時代に突入しつつあります。とりわけ中小企業や個人事業主にとっては、大企業のように潤沢な予算をかけずとも、構造化された正確な情報発信を積み重ねることでAIに引用されやすいコンテンツを作れる余地が残されており、早期に着手した企業とそうでない企業の差が今後数年で大きく開いていく可能性があります。

経済悲観50%超えという心理指標を、経営判断にどう織り込むか

今回の調査で特筆すべきは、回答者の半数以上が「前四半期よりも景気に悲観的になった」と答え、その悲観度が2020年半ば以来もっとも高い水準に達しているという点です。これは客観的な経済指標そのものというより、マーケティング責任者たちの「心理」を映し出す数字ですが、心理指標は実際の投資行動や採用計画に直結するため軽視できません。日本企業においても、海外の景況感の悪化がサプライチェーンや輸出入、さらには国内消費マインドに波及する可能性を踏まえ、自社のマーケティング投資計画を「楽観シナリオ」と「悲観シナリオ」の両建てで準備しておくことが、変化の激しい2026年を乗り切るうえで現実的な備えになるといえるでしょう。

まとめ

今回ご紹介したCMO調査の結果は、AIの普及が急速に進む一方で、マーケティング現場では予算の伸び悩みや人員抑制、経済への悲観といった厳しい現実が同時進行していることを示しています。「人材かAIか」という単純な二項対立ではなく、両者をどう組み合わせて能力スコアを底上げしていくかという視点が、これからのマーケティング組織には求められます。日本企業にとっても、GEOをはじめとするAI時代の情報発信手法への対応や、短期の数字と中長期のブランド投資のバランス設計は、決して他人事ではありません。今後も国内外の最新データを継続的に注視しながら、変化に対応できる体制づくりを進めていくことが重要だと言えるでしょう。

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