生成AI信頼度33.4%でSNS逆転、購入時の検索回数34%減――「AIに相談して買う」消費者の実態

生成AI信頼度がSNSを逆転し33.4%、購入時検索は34%減という調査データを示すアイキャッチ画像 時事ニュース
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生成AIに「何を買うべきか」を相談する――そうした消費行動は、もはや一部の若者だけのものではなくなりつつあります。日本ダイレクトマーケティング学会が2026年7月15日から16日にかけて実施した最新調査により、生成AIの情報に対する信頼度がSNSを上回り、購入時の検索エンジン利用回数が34.2%も減少していることが明らかになりました。本記事では、生成AI活用経験のある20代から60代の男女1,009人を対象としたこの調査データをもとに、生成AIが消費者の購買行動をどのように変えつつあるのか、そして企業のマーケティングや情報発信のあり方にどのような転換が求められているのかを詳しく解説します。

生成AIの信頼度がSNSを上回った――1,009人調査で見えた数値

今回の調査は、日本ダイレクトマーケティング学会がインターネット調査「PRIZMA」を用いて実施したもので、生成AIの活用経験を持つ20代から60代の男女1,009人が対象となっています。注目すべきは、情報源としての信頼度を尋ねた設問で、生成AIが33.4%(5段階評価で「信頼できる」とした4・5の合計)という評価を獲得し、SNSの19.1%を大きく上回った点です。最も高い評価である「5」を選んだ回答者の割合でも、生成AIは5.7%とSNSの3.2%を上回りました。一方で、SNSでは「信頼できない」とする1・2評価が31.5%に達しており、生成AIの13.2%との差は歴然としています。もっとも、検索エンジンや知人・友人からの紹介は、依然として生成AIよりも高い信頼度を維持しており、生成AIが情報源のヒエラルキーで一気に最上位に躍り出たわけではない点には注意が必要です。それでも、SNSという長年「口コミ情報」の主戦場とされてきたメディアを、生成AIがわずか数年で信頼度において上回ったという事実は、情報流通の構造そのものが変化しつつあることを示しています。

「検索しない」消費者の増加――購買行動はどう変わったか

信頼度の変化は、実際の消費行動にも表れています。調査では、生成AIを利用するようになってから「検索エンジンでの検索回数が減った」と答えた人が34.2%、「Webサイトの閲覧時間が減った」が28.6%、「購入時に悩む時間が減った」が27.0%にのぼりました。生成AIを活用するメリットとして最も多く挙げられたのは「商品を探したり比較したりする時間を短縮できる」で59.1%、次いで「自分の条件に合った商品を選べる」が34.7%、「情報が整理されて判断しやすくなった」が31.5%と続きます。具体的な活用シーンとしては、Google検索結果に表示される「AIによる概要」を参照する利用が46.1%と最多で、特定の商品について相談する利用が28.6%、おすすめの商品を尋ねる利用が26.8%となっています。利用されている生成AIサービスはChatGPTが68.9%で圧倒的な首位、次いでGemini52.3%、Copilot24.7%という順でした。購買活用が最も進んでいるカテゴリーは食料品で29.0%と全世代でトップとなり、旅行・宿泊が19.7%、家電製品が18.7%と続きます。年代別では20代の約7割が購入時に生成AIを活用していると回答した一方、50代から60代では約4割にとどまり、世代間で活用度合いに明確な差があることも分かりました。

独自考察――「AI相談型消費」がもたらす市場構造の変化

なぜ生成AIは検索エンジンより信頼されたのか――情報の「編集」という価値

検索エンジンが提示するのは「リンクの一覧」であり、SNSが流すのは「個人の断片的な意見」です。これに対して生成AIが提供するのは、複数の情報源を統合し、文脈に沿って再構成した「編集済みの答え」だと言えます。今回の調査で生成AIの信頼度がSNSを上回った最大の要因は、この「編集」というプロセスにあると筆者は考えます。SNSの情報は発信者の主観や誇張、ステルスマーケティングへの警戒感がつきまとう一方、生成AIの回答は一見すると中立的で整理された体裁を取るため、受け手は「加工されていない事実」であるかのような印象を抱きやすいのです。もっとも、生成AIの回答も学習データや検索連携の設計次第でバイアスを含み得ることを踏まえると、この「中立に見える」という性質自体が、今後の情報リテラシー教育における新たな論点になっていくはずです。

20代の7割が購入時に「AI相談」する意味――意思決定のアウトソーシング化

20代の約7割が購入時に生成AIへ相談しているという結果は、単なる「便利なツールの普及」以上の意味を持ちます。従来、消費者は複数の口コミサイトやレビューを読み比べ、自分なりに情報を取捨選択して意思決定を行ってきました。しかし生成AIに相談する行動は、その比較・検討というプロセスそのものを生成AIに委ねる「意思決定のアウトソーシング化」と捉えることができます。実際、調査では「悩む時間が減った」という回答が27.0%あり、迷う時間そのものを短縮したいというニーズが顕在化していることがうかがえます。今後、この傾向がさらに進めば、企業が消費者に直接語りかけるマーケティングだけでなく、生成AIというフィルターを介して「選ばれる」ための設計、すなわち生成AIに正確かつ好意的に参照される情報発信の重要性が一段と高まっていくと考えられます。

食料品がトップカテゴリーになった理由――低関与商品におけるAIの役割

購買活用カテゴリーで食料品がトップになった点は興味深い結果です。食料品は一般的に「低関与商品」、つまり購入にあたって深く検討する時間をかけにくいカテゴリーに分類されます。旅行や家電のような高額・高関与商品では比較検討に時間をかける消費者が多い一方、日々の食料品選びでは「手早く妥当な答えが欲しい」というニーズの方が強いと推測されます。生成AIは、まさにこの「深く考えたくはないが、それなりに納得できる答えは欲しい」という中間的なニーズに応える存在として定着しつつあるのではないでしょうか。今後は栄養情報やアレルギー表示、産地情報など、食品分野特有のデータをいかに生成AIが正確に参照できるようにするかが、食品メーカーや小売業にとって新たな課題になっていくと考えられます。

価格・仕様の誤情報という新たなリスク――企業のAIリテラシー対応

調査では、生成AIから得た情報が実際の商品情報と異なっていた経験として、価格情報の相違が24.5%、仕様・機能・特典の相違が20.5%、情報の古さが15.5%という結果も示されています。生成AIの回答は学習データの更新頻度や検索連携の仕組みに依存するため、キャンペーン情報や価格改定など変化の早い情報については、どうしても実際の情報とのズレが生じやすい構造的な限界を抱えています。企業側から見れば、これは看過できないリスクです。生成AIが誤った価格や古いキャンペーン情報を提示し、消費者がそれを信じて来店・購入に至った場合、企業の信頼低下やクレームにつながりかねません。自社サイトの構造化データを整備し、生成AIが参照しやすい形で正確な最新情報を発信し続けることが、今後のブランドセーフティの一環として重要になってくるでしょう。

マーケターが今すぐ着手すべき「生成AI最適化(GEO)」という新常識

検索エンジン向けのSEO(検索エンジン最適化)に加えて、生成AIに正しく参照・引用されるための最適化、いわゆるGEO(生成AI最適化)への対応が、マーケティング担当者にとって避けて通れない課題になりつつあります。今回の調査で「AIによる概要」を参照する利用が46.1%と最多だった事実は、多くの消費者が検索結果の入口で既に生成AIの要約に触れていることを意味します。この要約に自社の情報が正確に、かつ好意的に引用されるかどうかは、もはや従来のSEO対策だけでは担保できません。商品ページの情報を構造化し、価格や仕様、キャンペーン情報を常に最新の状態に保つこと、そして第三者のレビューサイトや比較サイトにも正確な情報を行き渡らせることが、生成AI時代における新しい情報発信の基本動作になっていくと考えられます。

世代間ギャップが示す次の10年のマーケティング設計

年代別の活用度合いを見ると、20代が約7割であるのに対し50代から60代は約4割にとどまっており、この世代間ギャップは今後10年のマーケティング設計に大きな示唆を与えます。現在40代以下の消費者が主要な購買層となる将来において、生成AIへの相談を前提とした購買行動はより一般化していく可能性が高いでしょう。一方で、高年代層は「偏った情報や古い情報への不安」を相対的に強く感じているというデータもあり、世代によって生成AIに対する期待と警戒のバランスが異なることも見逃せません。企業は、若年層向けには生成AIとの親和性を前提とした情報設計を、高年代層向けにはむしろ「人による丁寧な説明」や「信頼できる第三者の推薦」を組み合わせたハイブリッドな情報接点を用意するなど、世代ごとに異なるアプローチを検討する必要が出てくるはずです。

まとめ

今回の調査結果は、生成AIが単なる「検索の代替」を超えて、消費者の意思決定そのものに深く関与し始めていることを示しています。信頼度でSNSを上回り、検索回数を3割以上減らし、20代の7割が購入時に頼りにする存在になった生成AIは、もはや一部のアーリーアダプターだけのツールではありません。同時に、価格や仕様の誤情報といった課題も浮き彫りになっており、企業側には正確な情報を生成AIに参照させる仕組みづくりが求められています。検索エンジン最適化から生成AI最適化へ――マーケティングの現場は今、静かだが確実な地殻変動の渦中にあると言えるでしょう。

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