AIエージェント本番運用48.3%も7割が「体制不足」——大手企業505人調査で見えた”人材の壁”

大手企業のAIエージェント本番運用率48.3%、7割超が体制不足を示すインフォグラフィック 時事ニュース
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生成AIの活用が「使うか使わないか」から「どう本番運用に乗せるか」へと局面を移しつつあります。2026年7月に公表されたパーソルキャリア株式会社の調査によると、売上高1,000億円以上の大手企業においてAIエージェントを実際の業務で本番運用している割合はすでに48.3%に達しているとのことです。ChatGPTのような対話型AIの利用にとどまらず、業務プロセスの中にAIエージェントを組み込み、実際の意思決定や作業実行を任せる企業が半数近くにまで広がっている計算になります。

しかしこの調査が浮き彫りにしたのは、順調な普及の裏側にある新たな課題でした。本番運用に踏み出した企業のうち73.1%が推進体制に不足感を抱えており、最大の障壁として45.9%が「設計・評価できる人材の不足」を挙げているのです。技術の導入は進んでも、それを使いこなす人材の育成が追いついていない——今回はこの調査データを手がかりに、AIエージェント時代に企業が直面する新しい壁について詳しく見ていきます。

AIエージェント本番運用48.3%の内訳——「全社展開」はまだ2割

この調査は2026年5月20日から22日にかけて、売上高1,000億円以上の企業に勤務する部長職以上505名を対象にインターネット調査で実施されました。回答者の属性を見ると、経営に近い立場からの評価であるという点で、現場感覚だけでなく組織全体の導入状況を俯瞰した数値として読み取ることができます。

本番運用率48.3%の内訳を見ると、「全社展開・経営戦略統合」の段階に到達している企業は20.0%にとどまり、残りは「複数部署で本番運用」または「一部部署で本番運用」にとどまっている状況です。つまり、AIエージェントを業務に組み込んだ企業の半数近くが、まだ組織全体を巻き込む変革までは至っていないということになります。

さらに、PoC(概念実証)段階以上まで進んだ317名に限定して効果実感を尋ねたところ、59.0%が何らかの効果を実感していると回答しました。内訳は「特定業務・領域では効果を実感」が35.0%、「明確な成果が出ており定着」が24.0%です。裏を返せば、PoC以上に進んだ企業であっても4割程度は明確な手応えを得られていないということであり、導入と成果の間には依然として距離があることがうかがえます。

7割が抱える「体制不足」——最大の壁は”評価できる人材”

調査で最も注目すべきは、本番運用が半数近くに達した一方で、推進体制に不足感を抱える企業が73.1%にのぼった点です。「十分に整っている」と回答したのはわずか19.8%にとどまり、43.4%は「ある程度整っているが不足感がある」と回答しています。

導入・活用における主要な障壁を尋ねた設問(n=399)では、「設計・評価できる人材の不足」が45.9%でトップとなりました。AIエージェントは従来の生成AIチャットボットとは異なり、業務フローの設計、権限設定、出力結果の妥当性評価といった、技術と業務知識の両方を理解した人材が必要になります。単にツールを契約するだけでは機能せず、それを使いこなすための専門人材が組織内に不足している実態が、この数字から見えてきます。

一方で興味深いのは、効果を実感した層(n=187)の47.6%が「属人化していたノウハウの形式知化・継承が進んだ」と回答している点です。AIエージェント導入は単なる効率化ツールではなく、これまで暗黙知として個人に蓄積されていた業務知識を、組織の資産として可視化する副次効果を持っている可能性が示唆されています。

独自考察――「AIエージェント人材」争奪戦がもたらす新しい格差構造

ここまでの調査データを踏まえ、AIエージェントの本番運用が広がる中で企業が直面するであろう構造的な課題について、独自の視点から掘り下げていきます。

なぜ「設計・評価できる人材」がボトルネックになるのか

生成AIチャットボットの利用であれば、プロンプトの工夫ができる人材がいれば一定の成果を出せます。しかしAIエージェントは、複数のタスクを連携させ、外部システムと接続し、時には人間の承認を介さずに意思決定を実行する仕組みです。そのため求められる人材像は、AIモデルの特性理解だけでなく、業務プロセス全体の設計力、リスク評価力、そして「どこまでAIに任せてよいか」を線引きするガバナンス感覚まで含む、複合的なスキルセットになります。調査で45.9%が挙げた「設計・評価できる人材の不足」は、単なるIT人材不足ではなく、こうした複合スキルを持つ人材が市場全体でまだ希少であることの裏返しだと考えられます。

「全社展開20%」と「一部部署止まり」を分けるものは何か

本番運用に到達した企業の中でも、全社展開まで進めた企業はわずか20.0%にとどまりました。この差を生む要因として考えられるのは、AIエージェント活用を「個別部署のツール導入」として扱うか、「経営レベルの構造改革」として扱うかという位置づけの違いです。一部部署にとどまっている企業の多くは、情報システム部門や特定の業務部門が主導するボトムアップ型の導入にとどまっている可能性が高く、全社展開に至った企業は経営層が主体的に関与し、評価基準や権限設計を統一のルールとして整備していると推測されます。つまり、技術力の差以上に「経営の意思決定としてどこまでコミットしたか」が普及速度を左右している可能性があります。

外部プロ人材活用という”時間を買う”選択肢のリスクとリターン

パーソルキャリアは今回の調査発表の中で、短期的な解決策として外部プロ人材の活用を提言しています。自社で人材を育成するには一定の時間がかかる一方、AIエージェント活用の巧拙が競合との差別化要因になりつつある現状では、外部人材を登用して時間を買うという判断は合理的な選択肢の一つです。ただし、外部人材に設計を委ねた場合、ノウハウが社内に蓄積されにくいという副作用も考えられます。属人化を解消するためにAIエージェントを導入したはずが、今度は外部人材に依存する新たな属人化を生んでしまっては本末転倒です。外部登用と並行して、社内人材への技術移転を契約段階で織り込んでおく設計が欠かせないでしょう。

属人化ノウハウの形式知化47.6%が示す、意外な副次効果

効果を実感した企業の47.6%が「属人化していたノウハウの形式知化・継承が進んだ」と回答している点は、AIエージェント導入の本質を考える上で示唆に富んでいます。AIエージェントに業務プロセスを実行させるには、まず人間がその業務手順を言語化し、判断基準を明文化する必要があります。この言語化のプロセス自体が、これまで暗黙知として特定の担当者の頭の中にしかなかった知識を、組織全体で共有可能な形式知へと変換する効果を持つのです。つまりAIエージェント導入は、効率化のための取り組みであると同時に、属人化リスクを解消するナレッジマネジメント施策としての価値も併せ持っていると捉え直すことができます。

大手企業だけの現象では終わらない——中小企業への波及と格差拡大への懸念

今回の調査対象は売上高1,000億円以上の大手企業に限られていますが、AIエージェントを巡る体制不足の課題は、資本力や人材採用力で劣る中堅・中小企業においてより深刻な形で現れる可能性があります。大手企業でさえ73.1%が体制不足を感じている中、専任のAI人材を確保する余力の乏しい中小企業では、導入自体はできてもガバナンスや評価体制が追いつかず、誤った出力を検知できないまま業務に組み込んでしまうリスクも懸念されます。今後は大手企業の事例やノウハウを、業界団体や自治体、SaaSベンダーなどがどれだけ中小企業向けに翻訳して提供できるかが、企業規模間の格差を広げるか縮めるかの分かれ目になりそうです。

2027年に向けて企業が今すぐ着手すべき「人材ポートフォリオ」の再設計

調査結果を総合すると、2026年後半から2027年にかけて企業に求められるのは、AIエージェントそのものの選定以上に、それを運用する人材ポートフォリオの再設計だと言えそうです。具体的には、AIエージェントの設計・評価を担う専門人材の採用や育成、外部プロ人材との協働体制の構築、そして属人化していた業務知識を形式知化するプロセスの制度化という三つの取り組みを並行して進める必要があります。技術の進化速度に対して人材育成のスピードが追いつかない状況が続けば、本番運用率という数字だけが独り歩きし、実質的な成果につながらない企業が増えていく懸念もあります。数字の裏にある体制面の課題にこそ、次のフェーズの競争力の源泉があると言えるでしょう。

まとめ

パーソルキャリアの調査は、AIエージェントの本番運用が大手企業の間で48.3%まで広がっている一方、7割超の企業が推進体制の不足を感じているという、普及と定着のギャップを浮き彫りにしました。最大の障壁として挙げられた「設計・評価できる人材の不足」は、技術導入のスピードに人材育成が追いついていない現状を象徴しています。

一方で、効果を実感した企業の半数近くが属人化ノウハウの形式知化という副次効果を得ていることも分かりました。AIエージェントは単なる効率化ツールにとどまらず、組織の知識資産を再構築する契機にもなり得ます。今後企業に求められるのは、ツールの導入そのものよりも、それを使いこなす人材ポートフォリオをいかに設計し直すかという、より本質的な課題への取り組みだと言えるでしょう。

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